命賭け
命を賭けなければ、私は死んでしまうんだと思った。
呼吸が止まるわけでもなく、脳が腐っていくわけでもなく、それでも私は死んでしまうのだと気づいた。
人間として、知能や才能を培ったものとして、死んでいくのだろうと知った。
別にこのままでもいいのだろう。何もしたいことをできないままに、ただうっすらとその影を透明に消していくのもありなのだろうと。
人間として死んでいくことに、何のデメリットもないだろう。
このまま楽しくみんなと生きていたって、私はそれなりにいい気分でいられるはずだ。
完全に死んでいくわけでもないし、むしろ今は私の人生の中で充実している方に入る。
家に帰ったら皆んなとのやりとりも楽しいし、いろんなものに取り組んでいけるし、大人になってから仕事だけの忙しい日々を送るよりかは、よっぽどの青春を味わっている。
それでも私は作家になりたい。
文章に魂を捧げたい。
これはおそらく、紛れもない事実で、私の全てを激っていく。
それこそに私の生きている原動力がある。
周りの人たちももちろん大事だ。そして自分自身もまた大切だ。
私は答えを出さなければならない。そして伝えたいことを伝えなければならない。
私の生きていく道の中で、こうも苦しめていくものの正体が分かった気がする。
それは未納の年金のことでも、来週の予定をチャンに伝えるめんどくささよりも、民泊の仕事がなくなったことよりも、もっと私を苦しめていたものがあるのだ。
私の芸術性。世間から見ればクソくだらないような私のチンケな才能が、私の肉体や精神をクヨクヨさせている。
それは根っこのようなものなのかもしれない。
いくら地上に出ている花や茎をきれいに着飾っても、根の部分が腐ってしまっては、とても綺麗なものとは言えない。
逆にどれだけ地上の部分が枯れ果てても、根っこさえ強靭に保てば、いずれはまた花を咲かせてくれるだろう。
それが私にとっての芸術なのかもしれない。