退屈にて
退屈が、この世のなりよりの贅沢だ。
全てが満たされて、不安や焦燥もない、身体も心も落ち着いているこの瞬間。これ以上に、人は何を求める必要があろう。悩みだらけの面倒臭い生活だらけで、ふとこれらの心配事が消えてしまったらと、切に願うばかり。
願っては虚しくなり、願っては疲れて、そんな毎日だ。
そんな毎日から解放された先が、退屈なのだと思う。退屈はある意味一つの到達点のようで、そして一つの休憩ポイントともいえる。その場所でうつらうつらと心の拠り所を探して、しかしそんな所もどうやら見つからないみたいで、まるでここが居場所ではないような気がしてくる。そうなれば、人は退屈を感じてしまうのだろう。
そんな退屈をテーマにした小説を書いている。これは果たして小説になりうるものなのかも定かではないが、退屈をテーマに何かを書こうとは昔から考えていたもので、しかしいまいち始める気も起こらずじまいだった。そんな自分が不甲斐ないというか、ある意味正直というか。
大阪での生活が始まってそろそろ2ヶ月となるが、別にマンネリしたものは特になく、むしろありふれた刺激の数をどうやって受け止めようかと考えてしまうほどだ。だから私自身は別段退屈に揉まれているわけではない。しかし満たされていく心があるのもまた認めざるを得ない。いつかは私も退屈にたどりつくのだろう。そしてそのしのぎ方に工面を働かせなければならない時がきっと来る。これはおそらくの話でしかないのだが。